STUDIO NOTE

新年度が始まってしまいましたが、実は先週末まで2週間ほど熊本県のプロジェクトの現場でリノベーション工事に入っていました。ようやく7割くらい完了して、ひとまず一度東京に戻ってきたところです。

160406-1今回のプロジェクトはNPO法人SLOWLABELのメンバーとして参加しているもので、社会福祉法人さんがクライアントの食のモノづくりのプロジェクト。いわゆる営利企業さんとは違う条件などが多々ある中で、予算を抑えながらもグラフィックデザインからレシピ開発までプロが本気で仕上げていく前例のない取組みです。

細かいお話はもう少しすればプレスリリースも出るでしょうからその時に改めてご紹介します。今回はこの2週間の工事の裏話的なものを何回かに分けてお話できればと思います。

160406-4上の写真の既にある使われていない建物を利用して何かできないか?というご相談をSLOWLABELで受けたのが起点であり、そこからプロジェクトディレクターの発案でここにしかないジェラート店を立ち上げることになりました。

建物が既にあり、飲食店営業許可も取得してあり、厨房設備も空調設備もほとんど揃っている。条件としてはかなり恵まれているので、店舗デザインの役割も明確です。自然とプロの工事が必須になる設備工事を抑えて、できるところは自分たちでやるというDIY主体の方式になりました。

この、施工費用を抑える為のDIYというのは結構簡単に見えがちなのですが、既に場所がある&家賃が発生していない状況だからこそアリな方法です。もしも賃貸の場所でDIY施工をする場合、当然ながら施工期間中にも家賃が発生します。

開店準備で多忙なオーナーさんが昼夜ずっとDIY工事で時間をとられる&プロと違って素人なので道具の準備や作業の手戻りも多く工程のロスも多いです。人手があって人数×時間の作業量をこなせる等でなければ実はシビアなDIY施工ですが、今回は家賃発生のない自由な条件の場所だったので、工程は組みつつも自由なDIYで進めることに。

160406-2冒頭の写真のように福祉施設の利用者さん達と一緒に塗装したりもありましたが、まずは現地を確認して何をするべきかを改めて探ります。

色々とできる事はありそうですが、特に面積が広くて目についたのが床です。

現在の床の仕上が塩ビを主体として木目柄のフィルムを貼りこんでいる、いわゆる長尺シートという物。茶色系で重めの色調に、塩ビフィルム特有の薄っぺらい質感。素材から厳選して作るジェラート店にはちょっとフィーリングが違います。かといって無垢の分厚い重歩行フローリングなんかを敷くのもコスト的に不可能。

で、物は試しでお客様用トイレの床のすみっこをカッターで剥がしてみて状態を確認。元々のコンクリートの状態は築年数も浅く悪くなく、ソリッドな質感がジェラートの冷たい触感と相性も良さそうです。

160406-3で、結局店内の床を全てはがす事にしました。50平米ほどですが、これを剥がす作業はなかなかしんどいので覚悟を決める瞬間です。上の写真がまずはトイレの床の長尺シートを剥がしたところ。

床を剥がすというのは今あるものからの引き算、減算の設計プロセスです。あたらしく何かを作って貼る訳ではない分、材料費はかからない。しかし、人件費という手間がかかる。それこそ、下手したら新しく何かを貼る方が楽なんじゃないか?という位に労力を求められたりするわけです。

普通の工務店さんであればイメージを変えたいなら新しい長尺シート貼りをおすすめしてくる。それは楽だけれど表層は新しくなってもイマイチな結果になる事が多い。一見新しい何かをプラスしているのに、本質的にはマイナスになる。

今回のリノベーションはこの床剥がしが鍵になった作業の一つです。引き算する事で結果的に付加価値をあげられる事もあるという事ですね。さて、長くなってきたので続きはまた次回に。

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