STUDIO NOTE

ここ最近新しいお仕事のご相談を頂く事もあるのですが、店舗の設計をしていてずっと気になっていた事があります。それは、たいていのクライアントさんが既に物件を決められてから設計者を探し始めるという事です。

 

できれば物件の契約申込をされる前にご相談をいただいた方が良い事が多いです。せめてコレだ!という本命物件を含めて2〜3候補みつくろった段階でご相談いただけると、内見に同行してメリットとデメリットをご説明したり、場合によっては賃料交渉や大家さん負担での工事の交渉などもできます。

 

ただ、やはり皆さん必要にならないと店舗デザイナーへ相談しようというお気持ちにはならないというのもわかります。目玉物件であれば他にも申込者がいたり、早い者勝ちになってしまうので不動産屋さんに判断をせかされる事もあるでしょう。

 

そこで、今日は店舗設計のプロ目線で、僕が同行して内見する場合のチェックポイントをリストアップしておきます。もしもご出店を計画中でしたら、物件契約書にサインをする前に以下のチェックポイントをぜひ確認してください。

 

(1)外観

これは皆さん結構気にされているのですが、物件の手前100mの所から写真を撮り、50mの所で写真を撮り、10mの所で写真を撮ってみる。それを確認しながら、きちんとお店を訴求できるか、その為にはどんな店舗ファサードを構築し、どこに看板を出すべきか等をチェックしましょう。鉄則として路面1階がやはり認知されやすいですが、当然家賃も高いです。どの階に出店するべきかは、どんな業態でどんなお店にしたいかで変わってくるところです。

 

(2)店内の寸法

居抜きの場合はまた話が違いますが、店内の測れる箇所は全て5mくらいの長めのメジャーで測っておくといいです。特に搬入路の寸法は重要。搬入路のエレベーターのドア寸法と店舗の入口寸法よりも大きい物は搬入できません。設計のプロはみんなmm単位で測りますが、最初の段階ではcmでざっくり測っても大丈夫です。ただし、狭めのお店の場合はその1cmが重要になる場合もあるのでキッチリ測った方が後が楽です。

 

(3)床のレベルと天井高

床が既に仕上がっていたり、前テナントさんの床を剥がして糊が残っていたり、現場によってさまざまです。店内で段差があったりする場合もあります。天井に梁があってデコボコの時もあるので、それぞれの場所で天井の高さも測っておけると良いです。

 

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(4)排水の位置

これはとても重要です。給水はバルブ位置がどこにあっても店内どこでも管をつなげば蛇口をつけられますが、排水は位置を移動するのが難しくほとんどの場合は今ある排水位置に排水管をつないでいくことになります。つまり、排水の位置でほぼキッチンとトイレの配置可能なエリアが決まってきます。もちろん、排水の位置から離れた位置に作る事もできなくはないのですが、離れるほど排水管に勾配をつける為にキッチンやトイレの床をかさあげしていく事になります。排水の位置は必ずメモしておきましょう。排水はたいてい上の写真みたいな感じでフタがされていて、厨房などに使う雑排水と、トイレ用の汚水があります。雑排水と汚水混合という1つしかない場合もあります。エアコンのドレン用の小さい排水管もあるので間違えないように気をつけましょう。

 

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(5)分電盤と電気容量

いわゆる家庭内でブレーカーとか呼んでいるヤツです。たいていの場合は上のような金属製の扉つきボックスになっています。位置と、開けて中身を確認しましょう。100Vと200V、他に弱電端子盤と呼ばれる物もあります。一番大きなブレーカーの横に「120A」等と数値が書いてあります。これが契約容量で、これ以上の電気が必要な場合は増設が必要です。わからなそうであれば位置だけメモって扉をあけて中の写真を撮っておいてください。

 

(6)各種設備のメーター

店内の設備の位置をチェックできたら、設備のメーターがどこにあるのかもチェックしておきましょう。たいていの場合は店舗のあるビルの敷地の入り口まわり、裏口に密集しています。たまにメーターが設置されておらず、水道やガスの引込みからテナントさんがしてくださいと言われる場合もあります。これについては全額をテナント側が負担せず、折半にしたり全額家主さん側でもってもらえたりも交渉できます。

 

(7)空調室外機の置場所、排気ダクトのルート

忘れがちですが、エアコンを設置する場合は室内機だけでなく室外機の置き場所が必要です。また、厨房の換気扇やレンジフードなどの排気を出す場所もチェックしておきましょう。ビルによっては屋上に室外機を置く必要があり、その場合は1階から屋上まで室外機のドレンをつないで、本来は重力で流すドレンをポンプで排水する機械を入れたりと費用が嵩みます。排気ダクトに関しても同様で、においの強い業態や住宅が近くにある場合は排気のにおい対策で脱臭装置をつけたりします。オープンしてから近隣クレームで工事になる場合もあるので、先にチェックしておきたいところです。

 

(8)防災設備

たいていの場合は最低限必要な消火器、非常照明、火災報知機、排煙装置などは既に店舗区画についています。ただし、お店の設計内容によってはこれを増やす必要もあるので、どこら辺に何があるかはチェックしておきましょう。特に排煙窓と呼ばれる天井際の煙抜きの窓がある場合は、その位置に煙を逃がすように設計する必要があるので排煙窓の場所は要チェックです。

 

(9)工事区分と指定業者の有無

忘れがちなところですが、どこまでがテナント負担でどこまでがビルオーナー側負担なのかを確認しておきましょう。また、場合によってはビルオーナー側の指定業者による工事が必要になる場合もあります。特に設備関係や防災設備などはビル側の指定工事業者による工事になる事も多いです。その際の費用負担はどちらになるのか等も確認しておけると良いですね。きちんとした所では工事区分表という書類でもらえますが、口頭でざっくり確認するだけの時もあります。口頭確認の場合も、できれば書類を作って双方で確認しておくとトラブルを予防できます。

 

だいたいこんな感じです。路面店なのか商業ビルの中なのか、1階なのか地下なのか上層階なのか、完全なスケルトンなのか居抜きなのか造作が残っているのか、入口はシャッターなのか扉なのか、物件によってはより細かく見るべき箇所や抑え所はまだありますが、上記の8項目を見ておけばひとまずは問題ないでしょう。

 

とはいえやはり、理想的には物件探しの段階でご相談いただいて一緒に物件調査を行えるのがベストです。リスクを知った上で選択するのと、決めた後からリスクを知らされるのでは気持ちも変わってきますしね。できれば昼間と夜の違い、平日と土日の違い、晴天と荒天の違いも見る事ができればより良しですが、なかなかそこまで調査に時間をかけられないのが現実です。

 

こんな商品やこんなサービスで、こんなお店にしたい!というふんわりしたイメージの所からご相談いただければ、より良いイメージの実現の為にアイデア出しや事例のリサーチなども一緒に行なう事もできます。いきなり設計スタートではなく、開業のご相談から関わらせていただけると僕たちもやりやすいので、どうぞお気軽にご相談ください。

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