
古くて美しい色と書いて古美色。これ、なんて読むと思いますか?
正解は「こびしょく」です。
内装仕上材で真鍮メッキ古美色仕上、なんていう風に使います。
いわゆるエイジング加工と呼ばれる、使い古された雰囲気を作ることで重厚感や格調を感じさせたい時に選ばれる仕上げ方ですね。
一昔前は新品こそ至高!ツルツルピカピカすっきりが市場で一番支持されていましたが、いつのまにかユーズド加工やアンティーク加工、エイジング加工がすっかり定着しましたね。
そんなインテリアデザイン業界の潮流を見るには、アパレルやフード業界の変遷を見ていくとわかりやすいです。衣食住の世界はそれぞれ繋がって影響しているんです。
アパレルでは上記のユーズド加工やダメージ加工なんかは、1ジャンルを越えて色を選ぶ感覚で使われていますね。逆にユニクロのようなシンプルな日常着としてのインフラ的ファッションも広く浸透しています。
フードの世界では格安丼もの系にファストフードなどから、逆にエイジングビーフ=熟成肉や熟成寿司、発酵系、エル・ブジを源流としてNOMA等に連なる未来系まで様々です。
たぶんこの流れはこれからもっと加速していって、多種多様でボーダーレスな世界に突き進んでいくんじゃないかと予想しています。
さて、冒頭の写真。これはエイジング加工ではなくて、本物のエイジングされた銅のヤカンです。
日本人であればこのエイジングされた銅の雰囲気って神社仏閣などで触れているので馴染み深いかもしれません。
古来より銅の殺菌効果は魔除けとして宗教的な使われ方をしてきましたし、精製や加工難易度の低さからかなり古い時代から使われてきた金属の1つですね。
上記の理由から、格調を感じさせたり、歴史的な重厚感をイメージさせたい時なんかには空間にちょっと銅を使うと雰囲気が出ます。
アメリカのインテリアデザイナーは銅を使うの上手でいつも感心して参考にしています。たぶん、歴史が浅い国だからこそ歴史感を演出するのを練習して上手になったんでしょう。
ディズニーランドの国であり、古くはヨーロッパからの移民を中心とした人達が築いてきた国家ですから、新天地でも故郷の歴史ある重厚感を欲したのかもしれませんね。
さて、同じ銅でも新品だとこんな感じです。これはこれで光沢と深みのある鈍い色合いが美しい。
金属質らしい重厚感があり、汚れのない無垢な佇まいに清潔で高貴な印象すら受けます。
ただし、何もしていない銅だと冒頭の写真のように手の油などの影響を受けてだんだん色味がくすんでいきます。
そうならないように、最初の銅のピュアな色味を維持する為にクリアーのラッカー等で表面をコーティングして酸化を防ぐという仕上げ方もあります。
金属系のマテリアルってこうしたエイジングの有無や、表面研磨の方法、溶接などの加工方法、製品染めやメッキなど本当に色々な表現ができるんです。
いやぁ〜・・・おもしろいんですよね、金属系。
実は僕は高校時代に都立工芸高校のマシンクラフト科という、都内有数の工場を持つ学科に通学していました。
その学校では溶接から鋳造、旋盤にNC加工機にサンドブラストにウォーターカッターと多種多様な機械がならぶ地下工場があるんです。
マシンクラフト科はその地下工場のヌシ的な感じでして、一通りの加工技術を3年間で学びました。僕も実はガス溶接の免許などを持ってますよ。
そんな影響もあって金属って今でも大好きなんです。
古美色の話から少し飛びましたが、金属の仕上の話はまたしたいと思います。アルミにスチールにステンレス、ステンレスでもホット材とかコールド材とか色々な種類があるんですよ。
ほんと、楽しいですよ金属の話。
Comment
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。